前立腺癌

前立腺癌

前立腺がんとは

前立腺とは、膀胱の出口で尿道を取り囲んでいる男性のみにある臓器です。前立腺がんとは前立腺から発生するがんであり、他のがんと同様に放置すると徐々に病気が広がり、最終的には生命にかかわる可能性のある病気です。

前立腺がんには次のような特徴があります。

 欧米では極めて多いがんで、男性では最も多くみられるがんです。

 日本では前立腺がんの患者数が急増しており、男性のがんで最多の罹患数となっています。

 腫瘍マーカーであるPSAは前立腺がんの発見や治療中の病状把握などに用いられます。

 前立腺がん細胞は男性ホルモンがあると増殖しやすい性質をもっています。

前立腺がんの治療法

主な治療としては大きく分けると手術、放射線治療、ホルモン療法があります。これらの治療法を組み合わせることもあります。

ホルモン療法だけでは前立腺がんは根治できません。転移してからがんが見つかった場合にはホルモン療法が第一選択となりますが、転移のない状態で見つかった場合には原則として根治が望める手術や放射線療法が第一選択です。

すべての患者さんに上記の治療法が等しく適しているわけではありません。腫瘍のタイプ、年齢・全身状態、患者さんご自身の生活環境や考え方などから適切な治療法をしぼっていく必要があります。最近では、進行のリスクが低いと予想される場合は、監視療法、組織内照射療法も選択肢になっています。

前立腺全摘除術について

どのような治療法ですか?
前立腺を摘出した後に、膀胱を尿道とつなぎなおす手術です。前立腺がんのがん細胞を完全に体から切除しきる事を目標としているのが特徴です。前立腺に近い骨盤内のリンパ節も摘出することがあります。

手術の方法としては開腹手術や内視鏡手術(腹腔鏡下、ロボット補助下)などがありますが、当院では、2014年2月よりロボット補助下内視鏡手術(ダヴィンチ手術)を行っています。なお、患者さんの状態にあわせて、開腹手術を行う場合もあります。ダヴィンチ手術では数cmの傷をいくつかで手術を行います。

手術の規模は中程度であり、通常は手術翌日から歩行や食事が可能となり、術後7日ほどで退院可能となります。開腹手術では臍下から恥骨へ向けてお腹を縦に切開して手術を行います。

どのような人に適した治療法ですか?
前立腺全摘除術は、10年以上の余命が期待できる75歳までの人で、前立腺内部に腫瘍が留まっている段階の人に最も適した治療法と考えられます。

腫瘍が前立腺周囲へ広がっている場合には、たとえ全摘しても腫瘍が取りきれず、すでに目に見えない転移を起こしている可能性があるためにこの治療が適しているとは言えません。

前立腺肥大症を伴っている場合には、排尿症状の改善が認められるため、放射線治療より前立腺全摘術の方が適していることがあります。

その他、抗凝固剤の内服等の放射線療法の際の合併症の増悪が予想される患者さんには、前立腺全摘除術の方が優れている事があります。

性機能の保持の観点では、内分泌療法や放射線療法より優れています。ただし、前立腺がんの状況によっては、性機能温存(勃起神経温存)前立腺全摘除術が選択出来ない場合もあります。

治療効果が明確に判断でき、術後長期間に渡り良好な治療成績が維持される利点があります。

全摘標本の詳細な病理診断が可能です。この情報は経過の予測や追加治療を考える上での貴重な判断材料となります。

再発した場合にも、後から放射線治療や内分泌療法を追加することができます。

放射線療法について

どのような治療法ですか?
放射線のあてかたによって外照射と組織内照射に大別されますが、両者を併用することもあります。

外照射とは放射線を体の外から前立腺へめがけて照射する方法で、IMRT(強度変調放射線療法)、陽子線、重粒子線などにより治療が行われています。

組織内照射とは小線源療法とも呼ばれ、放射線を発生する金属を前立腺へ埋め込むことにより治療する方法です。性機能障害を起こしにくいのが特徴ですが、排尿障害が見られることがあります(当院では実施しておりません)。

放射線治療には後述のホルモン療法を一時的に組み合わせることもあります。

当院ではどのような形で治療していますか?
当院は周囲臓器への影響が少ないIMRTおよび陽子線による放射線治療装置を備えた数少ない医療機関です。放射線治療自体は当院では放射線腫瘍科で実施しておりますが、治療中・治療後の経過観察は泌尿器科と合同で行っています。

治療は通院で行います。
陽子線治療は、以前は先進医療で自己負担が必要でしたが、現在は健康保険の適応になっています。

ホルモン療法について

どのような治療法ですか?
前立腺がんは男性ホルモンがあると活発に増殖する性質があるため、男性ホルモンを抑え込むことで前立腺がんを縮小させる方法です。

男性ホルモンは主に精巣と副腎から分泌されています。精巣から出る男性ホルモンは精巣を摘出することや、同等の働きを持つ注射薬を使用して抑え込みます。副腎から分泌される男性ホルモンの働きは飲み薬で抑え込みます。注射薬と飲み薬と併用して用いることが一般的です。通院治療です。

ホルモン療法は単独で前立腺がん治療に用いることもありますが、放射線治療の補助として一時的に用いることもあります。

治療効果は?
多くの場合、しばらくの間はPSAが低下し、前立腺がんを縮小させることは出来ますが、効果は永続せず、完治させることは出来ないとされています。

高齢者や重度の併存疾患があり期待余命が長くない人には適している治療法です。

 
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